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もう20年くらい前の冬、私は風邪をこじらせて病院に入院しました。
病室は6人部屋で、私以外は全て寝たきりで反応のないご老人の方々でした。
そのある日、その中の一人の男性の奥さんと思われる女性がお見舞いにいらっしゃいました。
その女性は、その寝たきりの男性に「お父さん」とゆっくりとやわらかな口調でささやきました。
それと同時に男性の腕に手をポン、とやさしく当てました。
男性の反応はありません。
数秒くらいのあと、女性は再び同じように「お父さん」とささやき、手を当てました。
男性の反応はありません。
女性はかまわず同じ動作を続けました。
かれこれ30分くらい、その女性の動作は続いたと思います。
寝たきりになって、なんの反応もできなくなっても、お見舞いに行く/お見舞いに来てくれるとか。
それは最高に理想の夫婦の一面かもしれないと思います。
その男性は、どれだけその女性に愛されていたのか。
また、どれだけその女性を愛していたのか。
その女性は、どれだけその男性に愛されていたのか。
また、どれだけその男性を愛していたのか。
いい夫婦とはどんな夫婦かと言われたときに、私は必ずこの体験を思い出します。